聖工房

泉州焼 山直粉引き

鉄分の多い素地土に白色の化粧土を施す技法を粉引きといいます。
最初に工房を持ったのが、大阪府岸和田市の山直(やまだい、と読みます)で、そこで採れる鉄分の多い、やや粗めの土と、同じく山直で採った白い土をベースに自分なりの白化粧(白泥)を調合しました。
工房の前には農家のビニールハウスがあり、お年寄りのご夫婦が岸和田特産の水なすを栽培していたので、背丈以上も大きくなる水なすの茎を燃やした灰をいただいて、その灰をベースに透明釉を調合し、ガス窯で、焼成方法を試しながら、さまざまな焼き上がりの粉引きを作っています。
作品になるまで、何年かかかってりましたが、試行錯誤は今も続いているといってもいいかもしれません。
大阪の堺より以南を泉州と呼びます。太古の古墳時代よりの須恵器発祥の地です。
おそらくは、須恵器を作られた土と近いものではないでしょうか。
山直(やまだい)は、邪馬台国にも通じ、そういう言い伝えも残っていると聞きました。悠久の香りのする、土地。そこで採れた土。そこで育った植物の灰。そういうものを原料に、泉州焼のひとつとして、自分の作った粉引きのうつわを、山直粉引き(やまだいこひき)と呼ばせてもらっています。
ライフワークだと思っています。

 

薪窯作品

薪窯ほど思い通りにならない窯もありません。
手間も時間も費用もかかる上に、まったく安定していません。
もう、ほぼ趣味といってもいいくらい。
けれど、これが大変なのにやめられないのです。
年に一度のペースで、4日ほどかかって焚きます。
二つのパターンを交互に焚いています。信楽系と備前系。
信楽や伊賀の土で成形し、釉薬を内側に掛け、外側が緋色、内側が釉薬という二色の世界をもった作品。
備前の土で成形し、白化粧を施し、その対比で生まれる作品。
毎年、少しずつ、模索しながら、たどり着いた自分なりの薪窯の作品。
体力の続く限り、焚き続けたいと思っています。

 

毎日のうつわ

何を使うか、何を選ぶか、
生活者として、主婦として、うつわを作り続けてきた者として、ずっと考え続けてきました。
美しいもの、楽しいもの、きゅんとするもの、やわらぐもの、そういうものに囲まれて過ごす日常は、きっと幸せの匂いがするでしょう。
「もの」が何かを解決してくれるわけではないけれど、おいしそうに見えるごはん、お気に入りのマグ――ほんの些細なことが、一日の気分を変え、ほんの少しの上向きの気分が、一日を救うのだと思うのです。
土という自然素材の持つパワーを、人の心に与える影響を、信じています。
人の手が作り出す作品の持つ熱量が、届くのだと信じています。
うきうきする気持ち、落ち着く気分、ほっこりとする手触り、毎日を少しでも明るくできるようなうつわを提供できれば、こんなにうれしいことはありません。